研究開発

DDS

ナノハイドロキシアパタイトを用いたDDSキャリアーの開発
難溶解性・難吸収性薬物の改善技術

今や医薬品の開発は、コンピュータやロボット技術の発達により、自動的に新しい医薬品候補を探し、その効果をスーパーコンピュータ上でシミュレーションまでする時代を迎えています。しかし、この技術の発達に伴う弊害として、医薬品は病気に対して効果があっても、水に溶けにくかったり、飲んでも腸から吸収しにくい薬が増えてきています。

サンギは、体になじみやすいナノハイドロキシアパタイトを薬の表面にコーティングすることによって、薬を溶けやすくし、腸からの吸収を改善する独自の技術を開発しました。このドラックデリバリーシステム(DDS)技術は、今まで注射でしか使用されなかった薬を飲み薬に変えることが可能です。

また、既に市販されている飲み薬であっても、薬の量を減らし、副作用の心配を同時に減らすことも可能です。このことは、今まで患者さんが受けてきた身体的な苦痛や通院などの時間的な拘束を減らし、Quality of Life(生活の質)を向上させることにつながります。


図1.HAP製剤の断面模式図
原剤の周囲にnano-HAPをコーティング
することによりHAP製剤を作成します。
HAP製剤では他の添加剤を必要としません。

ハイドロキシアパタイト(HAP)は、骨や歯の主成分で、生体適合性が高く、毒性のない、医薬品添加物として認可されている物質です。

サンギは、ナノレベルのHAP(nano-HAP)を機械的に薬物表面に適用することにより、難水溶性・難吸収性薬物の溶解性の改善とそれに続く腸管からの薬物吸収の改善を目指す研究を進めています。

近年、創薬戦略の変化から難水溶性薬物は増加傾向にあり、市販されている薬物の40%、新規薬物候補化合物の70%が難水溶性であると報告されています。アメリカのFDAは、薬物の膜透過性と溶解性という二つの特性を用いてBiopharmaceutics Classification System (BCS)という4つのクラスを提唱しました。

サンギの製剤技術は、高い膜透過性と低い溶解性を示すClassIIと、膜透過性、溶解性ともに低いClassIVの薬物を主なターゲットとし、今までの研究で、数多くのClassIIの薬物がnano-HAPにより腸管吸収が改善でき、ClassIVに属する薬物についても同様の結果を出しつつあります。

サンギは、水中で直ちに分散するnano-HAPを独自に開発し、これを物表面に機械的にコーティングすることにより、製剤(HAP製剤)を作成しました(図1)。

図2は、ClassIIに属するベザフィブラートとそのHAP製剤の水中における状態を示す写真です。難水溶性薬物の多くは撥水性を示し、原剤は水に浮き、このままではほとんど溶けません(図2-A)。しかし、HAP製剤は、直ちに水に分散し、溶解します(図2-B)。

図2.HAP製剤による水に対する分散性の改善

図2.HAP製剤による水に対する分散性の改善

BCS Class II(溶けにくいもの)に分類されるベザフィブラートは、
原剤(A)では水に浮いたままですが、HAP製剤では直ちに水中に分散していきます。

特にBCS Class IVの薬物は溶けにくく、吸収性も悪いため、経口製剤化が困難であるといわれます。しかし、このクラスに属するフロセミドのHAP製剤は、原剤よりも200倍も溶け、体内に吸収された薬物量の指標であるArea Under the Blood Concentration Time Curve(AUC)の値は、およそ2.5倍も増大します(図3)。同じBCS Class IVに属するアセタゾラミドは、HAP製剤ではAUCが3.5倍以上も増加します。

一方、薬には副作用の問題が常に存在します。例えば、抗癌剤であるシスプラチンは点滴静注される薬で、特に腎臓に対する毒性が強い薬です。しかし、HAP製剤化により、経口製剤として用いることが可能となり、毒性も減ることがラットを用いた実験で証明されています。その他にも、何種類かの薬物で毒性が軽減されることを確認しています。

このように、サンギで開発したこの製剤技術は、今まで経口製剤化や新薬開発が困難とされてきた薬物に対して有効な手段となります。本技術は、製剤作成過程は乾式で行われるため、薬物の構造的変化はありません。

また、生体にとって毒性のある界面活性剤や腸管吸収促進剤を使用する必要はなく、薬物原剤の微粒子化などの前処理を必要としないため、コストメリットを十分提供できる技術です。

図3.HAP製剤による薬物血中濃度(AUC)の改善

図3.HAP製剤による薬物血中濃度(AUC)の改善

BCS Class IV(溶けにくく、吸収しにくいもの)に分類されるフロセミド(60mg/kg)をラットに投与した時の
24時間までのAUCは、nano-HAPを用いた製剤化により、他の添加物を用いずとも約2.5倍に増加しました。

学術論文

研究開発

  1. 研究体制
  1. デンタル
  2. DDS
  3. 触媒