12やむを得ない身の丈政策

社員を減らしても業績がすぐ好転するわけでもなく、創業以来最大の危機を迎えていた。

創業時は別々のキャリアを選択した佐久間の妻ロズリンは、夫からの要請とサンギの窮状を見て、夫婦ならば一緒にがんばろうと心を固め、1999年、入社を決心した。
会社経営やマーケティングの実務経験がないため、最初に何人かのコンサルタントを使い、様々な調査を実施。会社や市場の実態を把握しようとした。

もっとも重要な課題は、目も当てられないような状態に陥っていた「アパガード」プランドの立て直しだった。赤や黒の箱に黄色の派手なシールが使用されるなど、高級感も統一感もないパッケージをリニューアル。 14種類もあったラインアップを絞り、定番の 「アパガード M プラス」、喫煙者向けの「スモーキンアパガード」、キシリトールを配合した「アパガードキシリミント」、子ども用の「アパガードキッズ」の4種類に絞った。

このリニューアルを機に、消費者にむし歯予防成分「薬用ハイドロキシアパタイト<mHAP>」の 3 つの作用、歯垢の吸着除去、ミクロの傷の充填、表層下脱灰部の再石灰化をきちんと説明した。
リブランディングに加えて、プランド価値に関する社内教育も強化。何とか経営再建の道筋をつけようと、問屋の数を合理化し、値引きしない方針も打ち出した。

その後も研究開発を継続し、2004年には<mHAP>の粒子サイズの改良をきっかけに、「ナノテク アパガード」を打ち出したリニューアルを行った。やがて価格は安定し始め、サンギへの信頼度が高まってきた。
また多用化したハイドロキシアパタイト研究の中には、触媒プロジェクトや新歯科治療法の医療機器など、助成金を受給できるまでに成果が出たものもあり、サンギにようやく光が見えてきた。

(画像は、2002年にラインアップを4アイテムに絞った際の「アパガードMプラス」)